綱業商会では、ロープやワイヤーロープの加工に加えて、シート・帆布を使った横断幕の製作にも長年対応してきました。今回は、その横断幕づくりに欠かせなかった「文字入れ」の工程を、自作のペンプロッターで支える取り組みを紹介します。
この記事のポイント
- 横断幕の手書き文字入れを支えてきた職人さんの高齢化という課題
- 「全自動化」ではなく、輪郭だけをペンプロッターで描くという選択
- 市販品ではなく、自社の現場に合わせて自作したことの意味
- アナログの良さを残しながら、社内で続けられる工程に作り直す
横断幕に求められる、見やすさと耐久性
横断幕は屋外で使用されることも多く、文字には見やすさだけでなく、雨風や日差しに耐える強さも求められます。そのため、以前からお客様にご依頼いただいた内容に合わせて、耐候性に優れたペンキを使い、職人さんに一文字ずつ手書きで仕上げてもらっていました。
手書きの文字には、機械的な印刷とは違う力があります。布地の状態や文字の大きさ、全体のバランスを見ながら、その場で調整していく。そうした仕事は、まさに職人技でした。
布地の状態や文字の大きさ、全体のバランスを見ながら、その場で調整していく。
そうした仕事は、まさに職人技でした。
高齢化で見えてきた、続けるための課題
ところが、その文字入れをお願いしていた職人さんが高齢になり、後継者もいないとのことで、これまでと同じ方法で製作を続けることが難しくなってきました。
横断幕の需要がなくなったわけではありません。むしろ、お客様からはこれまで通り相談をいただきます。しかし、熟練した手書きの技術に頼りきった工程のままでは、いつか対応できなくなる可能性があります。
そこで考えたのが、職人さんの仕事をそのまま機械に置き換えるのではなく、社内で仕上げられる工程に組み直すことでした。
これまでの課題
- 手書き職人さんへの全面的な依存
- 高齢化と後継者不足
- 同じ方法では続けられない可能性
新しい工程
- 輪郭はペンプロッターで描画
- 塗りは社内で人の手で仕上げ
- 社内で完結できる安定した体制
輪郭だけをペンプロッターで描く
今回、自作したペンプロッターは、横断幕に入れる文字の輪郭を描くためのものです。
完成した文字をすべて機械で塗るのではなく、まずペンプロッターで文字の外形だけを布地に描きます。その後、社内でその輪郭に沿って耐候性のあるペンキを塗っていきます。
いわば、大きな塗り絵のような工程です。
輪郭が正確に描かれていれば、文字のバランスや配置を保ちながら、仕上げの塗装作業を社内で進めることができます。これにより、手書き職人さんにすべてを依存していた工程を、綱業商会の中で対応できる形にすることができました。
自作だから、現場に合わせて調整できる
ペンプロッターは市販品をそのまま導入したのではなく、自社の作業に合わせて自作しました。横断幕はサイズが大きく、素材も紙とは違います。実際の現場に合わせて考える必要がありました。
自作にあたって考慮したのは、たとえば次のような点です。
- 横断幕に使う大きな描画範囲への対応
- 布地の固定方法と、たるみへの配慮
- 耐候性ペンキの下描きに適したペンの動きと筆圧
- 実際の作業スペースに収まる構造
自作することで、必要な機能を確かめながら調整できるようになりました。文字データを読み込み、描画範囲に合わせ、輪郭を描く。こうした工程を少しずつ整えることで、実作業に使える形へ近づけていきました。
職人技をなくすのではなく、続けるために
今回の取り組みで大切にしたのは、職人技を否定することではありません。これまでの横断幕製作は、熟練した職人さんの手によって支えられてきました。その技術があったからこそ、お客様のご要望に応えることができていました。
一方で、後継者不足や高齢化は、多くの中小製造業が直面している現実です。だからこそ、今ある技術や仕事の進め方を見直し、社内で続けられる仕組みに変えていくことが必要になります。
ペンプロッターで輪郭を描き、人の手で丁寧に塗る。
アナログな仕上げの良さを残しながら、デジタルや機械の力で工程を支える。
綱業商会らしい、現場に根ざしたDXの一つだと考えています。
実際の動作の様子
実際にペンプロッターが動作している様子を、動画でご覧いただけます。
輪郭を描いた後は、社内でペンキを塗り、横断幕として仕上げていきます。
現場の困りごとから、使える仕組みへ
綱業商会では、長年培ってきた加工技術を大切にしながら、現場で本当に使える形でデジタル技術を取り入れています。今回のペンプロッターも、特別な展示用の機械ではなく、実際の仕事を続けるために作ったものです。
これからも、職人の技術や現場の知恵を見える形にし、次の世代へ渡していけるよう、社内で使い続けられる仕組みづくりに取り組んでいきます。
横断幕・シート加工に関するご相談
サイズや文字数、設置場所などに合わせてご提案いたします。手書きの風合いを残した仕上げにも対応可能ですので、お気軽にお問い合わせください。