連載「Aina’Ola について」第 2 回です。前回 (第 1 回) では、AI で業務処理スピードが上がった結果、承認作業がボトルネックになり、その解決のために「自分専門の AI」が必要だと感じた経緯をご紹介しました。
今回は、その自分専門クローンを、業務の中で実際にどう使うか ── すでにブログでご紹介したアプリ (Sentivox / Contrail) との連携や、汎用的なチャットツールから呼び出す方法を中心にご紹介します。
育てるだけでは意味がない、業務に乗ってこそ
第 0 回で「Aina’Ola はクローンを育てる基盤」だとお伝えしました。ただ、いくら立派なクローンを作っても、それを業務の流れの中で呼び出せなければ意味がないのも事実です。
Aina’Ola は、業務アプリから呼び出される「クローン提供基盤」として機能するよう設計されています。具体的には、業務アプリは Aina’Ola に「このクローンを使って、この会話に回答してください」とお願いするだけで、クローンの人格・知識・判断軸が反映された応答が返ってきます。
業務アプリ側は、自分でクローンを内包する必要はありません。1 つ Aina’Ola を整えておけば、業務アプリは何個増えても同じクローンを共有できます。
OpenAI 互換 API という共通言語
Aina’Ola は、業務アプリと話すときに OpenAI 互換 API という形式を採用しています。これは ChatGPT や Claude などとほぼ同じ呼び出し方なので、世の中に出回っている AI 連携アプリの大半が、そのまま Aina’Ola にも繋がることを意味します。
実際、弊社で日常的に使っているこれらのツールから、Aina’Ola のクローンを呼び出せています:
| 呼び出し元アプリ | 使い方 |
|---|---|
| Open WebUI | 普段の社内チャットを Aina’Ola クローン経由で行う。社員も同じ画面で使える |
| Cursor / VSCode | コードや文書を編集しながら、横でクローンに相談 |
| Claude Code / Codex | ターミナルや CLI から、クローンに長文の壁打ちをさせる |
| 業務アプリ (自社開発) | Sentivox / Contrail / 今後追加予定のアプリ群 |
「特定のサービス・特定のアプリの中でしか使えない AI」ではなく、「どのツールからも同じクローンが使える」 ── これが Aina’Ola の汎用性を生み出している部分です。
事例 1: Contrail との連携 ── 設計の場面で「あの人ならどう答えるか」
具体例として、Contrail (設計根拠ナレッジ AI) での連携をご紹介します。
Contrail は、図面・技術資料 PDF を登録すると、AI が 12 カテゴリで設計者にインタビューして「設計の根拠」を構造化するアプリです。Aina’Ola クローンと連携することで、過去案件の根拠を踏まえながら、「あのベテラン設計者ならどう答えるか」 を AI 経由で問えるようになります。
たとえば「シャフトシール設計の注意点を教えて」という問いに対して:
- Contrail 側: 過去の機能要件・シール材・不具合事例・表面処理・材質変更などの設計根拠を引き寄せる
- Aina’Ola クローン側: ベテラン設計者の判断軸 (「この条件なら表面処理より材質変更が長期的に有利」など) を反映
- 統合回答: 根拠リンク付きの統合回答 + どのクローン・どのケース・どの根拠を参照したかの透明性表示
「設計の正解」を AI に教えてもらうのではなく、「自分の会社のベテランならどう判断したか」を、退職後でも問い続けられる状態が作れます。
事例 2: Sentivox との連携 ── 商談を「コーチ」が振り返る
もう一つの実例が、Sentivox (音声振り返り AI) との連携です。
Sentivox は、通話・商談・面談などの音声・動画データを、文字起こし + 感情分析 + LLM 文脈分析を経て、議事録・潜在的懸念・改善提案まで自動生成するアプリです。処理を開始する画面で「どのクローンに分析させるか」を選べる仕組みになっています。
たとえば、ある商談録音を Sentivox で処理する際に、Aina’Ola で育てた「営業のベテランクローン」を選んでおくと、ベテランの観点で改善提案が返ってきます:
- 「セキュリティ要件・データの取り扱い」を早期に議論すべきステークホルダーへの説明
- 「デモ後の意思決定プロセス・クロージング」の検討
- 「相手の確認・合意取り付け」のクロージング強化
商談直後に、収録ファイル 1 つから「コーチが振り返ってくれた」状態が自動的に立ち上がります。ロールプレイ研修の相手としても、退職後のノウハウ参照先としても使える仕組みです。
機密情報をどう扱うか ── Cloak (クローク) の仕組み
業務でクローンを使うとき、ほぼ必ず付いて回るのが 「機密情報の扱い」です。商談録音には顧客名や金額が、設計相談には図面情報や取引先名が含まれます。これらを商用 AI (Claude / GPT 等) に直接渡すのは、業種によっては難しい。
Aina’Ola は、この問題に Cloak (クローク) という機能で対応しています。Cloak は「機密語句をダミー (隠し布) で覆ってから送る」という発想の処理で、機密が含まれる会話を扱っても、顧客名や金額が安全に守られる仕組みです。
機密語句の検出には LLM ではなく、日本語の固有名詞認識と、自社で登録した顧客名辞書・カスタムルールを組み合わせています。ルールベースなので動作が速く、誤検出が起きても「なぜそう判定したか」を後から追跡しやすい設計です。
送信モードは 3 つあり、クローンごとに既定を選んでおけば、あとは自動で動きます:
- 通常モード: 機微情報を含まない会話用。マスキングなしで商用 AI (Claude / GPT 等) に送信
- 秘匿軽量モード: 機密会話を一切社外に出したくない場合。Local LLM (Ollama 等) で完結
- 秘匿厳格モード (Cloak): 商用 AI の高性能を使いたいが顧客名は出したくない場合。機密語句をダミーに置き換えて送信し、応答を受けて元の語に戻す
利用者は毎回設定を切り替える必要はなく、クローンごとに既定モードを 1 度決めておけば自動です。場面によって都度切り替えることもできます。「Claude や GPT の高性能を使いたいが、顧客名や金額は外に出したくない」という業務の現実に、Cloak が応えます。
「使う AI」を場面で切り替えられる
もう一つ実用面で大きいのが、同じクローンを呼び出すときに、その場の用途に応じて使う AI を切り替えられることです。
| 場面 | 選ぶ AI |
|---|---|
| 機密性が高い社内検討 | Local LLM (Ollama mistral-small / gemma3) で完結 |
| 難しい戦略判断 / 大量資料の要約 | Claude Sonnet や GPT を一時利用 |
| 簡単な質問 / 大量処理 | 軽量モデル (Gemini Flash 等) でコスト抑制 |
クローン本体 (人格・知識・経験) は Aina’Ola 側に保管されているので、どの AI を選んでもクローンの振る舞いは一貫します。AI ベンダーに会社の判断軸を預けてしまうリスクを避けながら、各 AI の良いところだけを使い分けられる ── これは長く運用するほど効いてくる設計です。
次回予告
ここまで「クローンをどう使うか」をご紹介してきました。次回 第 3 回 では、いよいよ「クローン人格の作り方」です。第 0 回で触れた 3 階層 (Identity・Skills・Resources) を、実際にどう構築していくのか ── 対話で作るパス、資料から一括投入するパス、メディア入力 (動画/音声/画像) の活用まで、具体的な手順をご紹介します。
連載全体については以下をご覧ください:
- 第 0 回 (序章): Aina’Ola とは何か
- 第 1 回: なぜ自分専門の AI が必要だと感じたのか
- 第 2 回 (本記事): クローンを業務で使う ── 周辺アプリとの組み合わせ
- 第 3 回: クローン人格の作り方 ── 3 階層の構造
- 第 4 回: クローンが何を見て答えているか ── ナレッジ参照と、普通の RAG との違い
- 第 5 回 (最終回): クローンを育てる ── 維持・メンテと自動化
関連ページ:
- Aina’Ola Project の概要 → Aina’Ola Project とは
- Sentivox 開発事例 → 音声から 感情・文脈・改善ポイントまで AIが振り返るアプリ
- Contrail 開発事例 → AIと相談しながら 設計の根拠を引き出すアプリ
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